パデレフスキ版のワルツ集と、簡単に比較します。
内容の違い
曲のタイトル
パデレフスキ版
Op.18, GRANDE VALSE BRILLANTE
Op.34-1,34-2,34-3 GRANDE VALSE BRILLANTE
Op.42 GRANDE VALSE
Op.64-1,64-2,64-3 VALSE
エキエル版
Op.18 Valse brillante
Op. 34-1,34-2,34-3 Trois valses
Op.42 Valse
Op.64-1,64-2,64-3 Trois valses
パデレフスキ版の“GRANDE”や“BRILLANTE”は、おそらく出版社が独自の判断で付け加えたもので、エキエル版のタイトルが自筆譜に基づくものです。
解説
パデレフスキ版
主に、フランス初版、ドイツ初版、その後の出版や弟子の楽譜における相違の説明と比較と検証。ミクリ版や他の最近の版の検証。検証により何を採用し、何を採用しなかったか。事細かく解説されています。
エキエル版
1曲あたりの解説の文字数がパデレフスキ版より多く、パデレフスキ版よりさらに深掘りされた解説です。
実際の楽譜で
例としてOp.18、俗に日本では華麗なる大円舞曲と言われているワルツ第1番を2カ所見比べてみます。
第1小節~第12小節
パデレフスキ版
エキエル版
スタッカートに違いがあります。
強弱記号も違います。
エキエル版の、小節ごとのクレッシェンドとディミヌエンドはショパン自身が記したもの。 パデレフスキ版の3小節にまたがる1つのクレッシェンドとディミヌエンドはフランス第2版で独自に変更されたものです。
第21小節~第23小節
パデレフスキ版
エキエル版
指番号に違いがあります。
ショパンはこのOp.18の製版用自筆譜や校正刷には指使いを書き込まなかった。
エキエル版は、弟子が所有していたレッスンで用いられた楽譜にショパンが書き込んだ指番号を採用。パデレフスキ版の指番号は、校訂者独自のご判断です。
第1小節~第4小節
エキエル版には以下のヴァリアントが掲載されています。
レッスンで用いられた楽譜にショパンが書き込んだヴァリアントですが、初期ヴァージョンの自筆清書譜でもこの部分はオクターブで書かれていたようです。
値段と曲目数の違い
パデレフスキ版の方が安い
曲目17曲
英語版よりは安い
遺作が含まれていないので8曲
補足動画
この記事の比較内容を、音にして比較した動画です。併せてご覧ください。
感想
ショパンは、最後の最後まで自作の細部に手を入れていたようで、現在に残された楽譜に相違がたくさんあるのは、当たり前です。それ以外にも楽譜の相違に原因は多々ありますが。
その違いの中から、どれを選んで楽譜に載せるかはパデレフスキ氏やエキエル氏たち校訂者のご判断、どの楽譜を選んでどのように弾くかはピアニストたちのご判断、誰が演奏される曲もしくは演奏された曲を聴くかは私を含むピアノが弾けない人たちの判断で、特にショパンの場合、選択肢が多く奥が深いものだと楽譜を比較して感じました。
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